Cool Japan と東映アニメーション

 

 日本のアニメーション界をリードする雄、東映アニメーションがJASDAQに上場したのは2000年。アニメ企業として上場しているのは珍しい。

 

 東映アニメーションが上場した2000年ごろは、世界はポケモンブーム。日本のアニメはすごい人気というのが、政府筋にも知れ渡ったことだ。経済産業省の中に文化情報関連産業課(メディアコンテンツ課)が設立されたのは2001年。アニメが文化だけでなく経済活動としても重要視されるようになってきた。

 

 実際、東映アニメの海外売上比率は上場時は40%を超えていたはずだ(残念ながら手元に資料がない)。ドラゴンボールやデジモンの海外輸出が好調で、反面国内のビジネス展開は伸び悩んでいた。

 

 それでは、Cool Japan という言葉が(少なくとも)日本で定着した現在(2013年)はどうか?海外売上比率は9%と1割を切っている。

 

 これは、海外の売上が減少したこともあるが、それ以上に、国内ビジネスがぐんぐん伸びていったことによる。特にここ10年、東映アニメーションをひっぱったのはワンピースの多方面の展開だ。

 

 皮肉な現象だ。クールジャパン政策は本来は、日本のコンテンツ、そして近年はファッションや食を「海外」に広めるはずのものだ。

 

 ところが、日本のアニメーション製作を代表する東映アニメーションの海外売上げはこの間減少してしまった。そして、さらに皮肉なのだが、東映アニメーションの国内売上げは増加したため、東映アニメーションにとって、海外が苦戦していることは、さほど苦痛になっていない。

 

 そして、「世界で評価される日本のアニメ」という評判は東映アニメーションにとって「国内でビジネスを行う」ことに非常に役に立っているようなのだ。

 

 変な話だが、一般人は(そして大部分の政府関係者も)国内で露出が増えている東映アニメーションの姿をみて、世界でうまく行くのではないかという「幻影」を持つことができる。東映アニメーションはうまくCool Japanという雰囲気の中で業績を伸ばしたような気がする。

 

 一方、政府は思惑が外れただろう。クールジャパン政策を打ち出した頃は、「東映アニメーションのように海外売上比率が高い企業」をロールモデルにし、後続する企業が出てくることを望んでいたはずだ。

 

 ところが、海外市場開拓をリードしていた東映アニメーションが国内回帰になり、今アニメ業界では、海外に依存する企業がなかなか見当たらない。

 

 

 クールジャパンの手本となる企業が確定できないことが、クールジャパン政策の「あいまいさ」の一つの要因だと思う。