クールジャパン外伝  SANAAはルーブルランスになぜ選ばれたのか?

前回はザハが設計した南仏の図書館建設が中止になった話を紹介した。

クールジャパン外伝 ハディドとフランス ポーの図書館建設挫折について - COOL JAPANってなんだ

 

 今回はフランスのルーブルランスになぜ日本のSANAAが選ばれたかについて紹介する。

 

地域振興策として、フランス北部、リールの近くにあるランス(LENS カタカナ表記だと大聖堂のあるReimsと混同されますが別の町です)にルーブルの別館をことが決定したのが2003年。多くの候補地から選ばれた結果だった。

2005年、18人の専門家(建築家、政治家、ルーブル館長)からなる専門家がプランを採点。フランスのルディ・リッチオッティ(7715)、SANAA(7645)、ハディド(6890)(()内は得点)のプランが残った。

 

但し、リッチオッティのプランはほとんど地下に埋没したプランで、「地域の炭鉱の歴史を冒涜するもの」と反対を受け、2位のSANAAのプランを採択するかしないかについて、地域の政治家からなる44名の委員会に投票がゆだねられた。投票は賛成22、反対22と二つに割れた。議長が賛成し、SANAAのプランが選ばれた。

 

しかし、その後、予算の膨張に悩むこととなる。予算は1億1700万ユーロとされたが、1億5000万ユーロは必要とされた。建築費用の削減をSANAAに求めるなど18か月が無駄になった。リッチオッティのプランを採択したほうがいいのではという声まであった。2007年にようやくプランが認定された。

総工費は1億5000万ユーロに膨れ上がった。

参考

Le Louvre-Lens - D'architectures

Chronologie du Louvre-Lens — Wikipédia

 

SANAAのプロジェクトも予定より膨張したようですが、当時、欧州に事務所を持つ2社(ハディドのオフィスはロンドンにあり、フランス北部はロンドンに近いです)を差し置いて採択された背景には、リッチオッティとハディドがそれぞれ、政治家などの後押しを受けていた間におちたこと、そして、何より「建ちそうな建築」だったことが大きいらしいです。

 

建築の素人である政治家がプランの最終選択を行ったのはよかったのでは?と思います。あとの二つは素人目には「建つのかいな?」という基本的な不安を払拭していない。

SANAAのプランは変更可能な柔軟性があったのもよかったとのこと。

 

それにしても総工費は膨張します。新国立競技場も膨張の可能性は常にあります。

膨張させたくないのであれば、ものすごく簡素で簡単な素人目にも「建つ」建築を選ぶ必要があるのではと思いました。

 

ご参考まで。