クールジャパン外伝 ハディドとフランス ポーの図書館建設挫折について

新国立競技場の問題がなかなか解決しない。いったん白紙に戻ったあと、ハディドが日建建設とタッグを組んで再挑戦をするとも伝えられている。

新国立競技場公募「ザハ・ハディド氏」新計画提案へ 日建設計とチーム - 産経ニュース

 

いったん建設が決まった施設が白紙となるのは、日本では珍しいことかもしれないが海外ではよくあることだ。

 

特にハディドは「アンビルドの女王」といわれるだけあって、挫折した建築物も多いようだ。ここでは、フランス南部のポーのメディアテーク(中央図書館)の建設の挫折について紹介したい。

メディアテークというのはフランスで図書館とDVDなど視聴覚資料を集める中央図書館のような施設だ。

以下がハディドの事務所のHPの模型

PAU Mediatheque Paper Relief - Artwork - Collection | Zaha Hadid Design

 

プロジェクトが始まったのは2003年、スペインの「ビルバオのグッケンハイム美術館(1997年)が注目されており、欧州で大型建築が相次いで発表された。

ビルバオ・グッゲンハイム美術館 - Wikipedia

 

ポーはこのビルバオから車で2時間のところにある。現代建築が観光客を集めるのをみて、非常にゴージャスな建築をすることを決定した。

当時すでにハディドは「ほとんど建たない」建築家として知られていたので、ハディドが選ばれたことは驚きをもって迎えられた。

Pau choisi Zaha Hadid - SkyscraperCity

 

ハディドのデザインは建築物全体をカーボンファイバーのシェルで覆うという前代未聞のプロジェクトであった。プロジェクトの経費は3200万ユーロ、ハディドの建築物だけで1900万ユーロ、うちカーボンファイバーのシェルだけで700万ユーロかかるというものであった。建築費は平米あたり2900ユーロに上り、建築費が高すぎるという批判が高まった。高騰する建築費を抑えるため、工法の変更などが考えられた。

しかし当初予算は1700万ユーロしかなく、かつ欧州連合からの補助620万ユーロが得られなかったこともあり、結局このプロジェクトは挫折した。2006年のことである。

Libération - Médiathèque casse-cou

Pau renonce à construire la coûteuse médiathèque de Zaha Hadid - Etat et collectivités

 

なおポーのメディアテークは規模を大幅に縮小して2013年に開館した。

http://www.culturecommunication.gouv.fr/Presse/Discours/Inauguration-de-la-Mediatheque-Andre-Labarrere-MIAL-a-Pau

 

プロジェクトは1500万ユーロで、建築家はDaniel Rubin。

Pau : la nouvelle médiathèque André-Labarrère ouvrira en avril - LaRepubliquedesPyrenees.fr

 

で、なぜ、これがクールジャパン外伝かというと、このようなアンビルド案件により、日本人建設課は「建つ」という評価を得ていくのである。

続きはルーブル・ランスのお話で。